『 ココロのカタチ 』
昭和40年代の話しです。
二つ違いの仲良し姉妹のお姉ちゃん、カナちゃんと妹のメグちゃんは、
いつもおそろいのお洋服を着て、どこへ行くのにも一緒にお出かけをしていました。
おとなしいお姉ちゃんのカナちゃんは、お稽古事のピアノもお習字も、黙々とこなし、宿題などは必ず終わらせてから遊びに行く、堅実な性格の女の子でした。
それに対して妹のメグちゃんの方は、まずは自分の遊びたい遊びをして、さて、もう時間がないというところで、ピアノの課題曲をマスターしたり、宿題を終わらせるという要領の良さと行動力を併せ持つ活発な女の子でした。
これは『蟻とキリギリス』や『ウサギと亀』のようなお伽話ではありません。
そんな二人でしたが、お姉ちゃんのカナちゃんはショートヘアー。
メグちゃんの方は、長い髪を『三つ編み』にしたり、『ポニーテール』にしたりと変幻自在のヘアスタイルを楽しんでおりました。
メグちゃんは、クリクリしたぱっちりお眼々で、また末の娘(むすめ)という事もあり、彼女の人懐っこい性格が相まって、周りの人から随分とちやほやされていました。
お姉ちゃんのカナちゃんも姉妹良く似た可愛らしい顔をしていましたが、どこか大人びた表情で、おすまし屋さんの印象の強い女の子でした。
二人に遊び道具の取り合いや、物事の順番をめぐった争いが始まると、
『お姉ちゃんなんだから、…』
というセリフでカナちゃんはいつも我慢をする役をはたしてきました。
小学生の小さな女の子に刻み込まれた一つ一つの体験は、彼女のハートをどんなに揺るがしていたことでしょうか。
時は経ち、姉妹が中学校に上がってからのこと。
家族で懐かしいスナップ写真のアルバムを開いていました。
すると、一枚の写真に皆が異和感を覚えました。
それはカナちゃんが一人で写っている写真でした。
太陽がまぶしいのもあったのでしょう。
カナちゃんは珍しく眉間に皺を寄せて、上目遣いにカメラを睨みつけていました。
子どもらしい愛くるしい表情です。
が、しかしです。
この一枚の写真には嘘がありました。
カナちゃんの髪には、無いはずの『三つ編み』が不自然な姿でお下げになっていたのです。
カナちゃんは幼心に、どうしてもメグちゃんと同じように『三つ編み』を結いたかったのでしょう。
そして皆にちやほやされたいという一つの『憧れ』の象徴だったのかもしれません。
それを我慢していた心がいつの日か、油性『マジックペン』で写真に描き込むというカタチで表れてしまったのです。
おとなしい娘(こ)だったので、まさかカナちゃんがそんな風に思っていたとは、お母さんは露ほども感じていなかったそうです。
そして当のカナちゃんは、写真に自分で『三つ編み』を描き込んだことを覚えていませんでした。
それから30年以上経った現在、カナちゃんも二つ違いの姉弟を持つ二児の母です。
彼女の子供達の言葉にできない心の声が、はたしてどれくらい聞こえているのでしょうか。
まさか末の男の子の写真に『三つ編み』が描かれるなんてことは……。
(了)
※ この話しは、事実に基づいて書かれたフィクションです。







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