『遊星のサドル』 at 吉田道場下
近所に『吉田道場』がある。
バルセロナオリンピック、柔道男子78kg級金メダリストの『吉田秀彦』氏の格闘技道場だ。
東急線『某』駅近くのビルの二階にある。
僕んちには愛犬がいる。
彼と行動を共にする事は、日本ではまだまだ快適ではない。
飲食店に同伴できるのは、「盲導犬」か「介助犬」のみがほとんどだ。
なので、ときにはキャリーバッグに忍ばせて、知らんぷりをして連れて入ることも、間々ある。
(飲食店以外だけどね)
しかし、うちの子はどうにも、じっとしてはいられない。
なので、飲食店の場合は店の表にあるテラス席を探すこととなる。
東京とはいえ、「テラス席」のある、「ペット同伴可」の飲食店などは、小洒落た街、「駒沢公園」「自由が丘」「渋谷」「代官山」「お台場」などに、そこそこあるぐらいで、
なかなか、そんなに広い地所も、理解してくれるオーナーも、お客さんも居やしない。
昨日の散歩で、初めて気付いたのが、『吉田道場』の下のホルモン焼き屋だった。
坂の途中なので、3、4段上がったところに店の入り口がある。
高く上げた基礎のおかげで玄関前に一間ほどのスペースがあった。
ビールケースの上のコンパネ(コンクリートパネル)テーブル、小さな丸椅子でもって、席が作ってあった。
「生ビール」「シロ」「ハツ」「レバー」「ししとう」「豚バラしそ巻き」「セロリの浅漬け」「もつ煮」「ネギ塩ホルモン炒め」等々
なかなか悪くなかった。
残暑残るも、夕方には秋を感じさせる涼しい風が通る。
「もつ煮」はさっぱりした味でGood。
「ネギ塩ホルモン」もニンニクとキャベツの甘みがイイ感じだった。
しばらく飲んだところに、連れが言った。
僕の肩越しの風景。
『どうして二色なのか分からない』
自転車のサドルのことだ。
振り返るとアンティーク調の自転車が一台。
サドルが「ツートーン」になることは、そんなに珍しいことではないのに、
そう話すと、
『違うよ、あっち』
と指を指す。
僕はさらに腰をひねり、連れの言ったことの意味が分かった。
そこにはもう一台の自転車があり、その中央に乗ったサドルは、
「前後を真ん中から二分し、前がシロ、後ろがグレー」のなんとも奇妙なサドルであった。
確かに意味も、デザイン性もよく分からないものだなと思った。
韓国焼酎のハーフボトルを二本空にして、僕はテラスから落ちることもなく、その店を立った。
(了)
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