『 メイシャ 』 2/2
昔、学校の保健室に貼ってあった『保険ニュース』的なポスターに『トラコーマ』の病状の実物写真があった。
患っていた方には申し訳ないが、その当時は正直、目を背けていたと思う。
その日は、目薬(点眼液)を二種類処方してもらって帰った。
二回目の診察。
土曜の朝九時だというのに、待合室はまたしても満席。
八時過ぎに診察券を持ってきておいたので、五番目くらいには呼ばれた。
奥の診察室で先生に
『ほぼ良くなったので、あとは目薬を…』いついつまで注して、にとどまった。
『最後に眼圧を測って、』
と言った先生にお礼を言って、初日の初めに目についた白い機械の前に座った。
顎とおでこを当て、機械の中を見る。
『大きく見開いて下さい。』との指示に従う。
次の瞬間、『フッ!…、フッ!…』と眼球に空気が当てられる。
右、そして左眼。
『フッ!…、フッ!…』
看護士さんが『あれっ?』という顔で、
『もう一度、大きく見開いてぇ、』
と言って、『フッ!…、フッ!…』
瞬きをしてしまったか、と僕自身は気を取り直したが、
『もう一度ぉ、』と少し焦っているよう。
機械の調子が悪いのかと想像した。
『フッ!…、フッ!…』
看護士さんは腰を上げ、小走りに奥の診察室の先生のところに駆け寄った。
『先生…、21…、22…』
とぎれとぎれに聴こえる看護士さんの声。
すると先生が僕のところまできた。
『正常な眼圧というのは、数値では『20』以下なんですけど、ちょっとそれを越えていたので、
もし来れるのなら、ひと月後くらいにもう一度来て…』
礼を言って診察室を出た。
診察の会計を待っていると、『緑内障』の文字が眼に飛び込む。
『40歳を超えたら注意!』のパンフレット。
それまで、一度も眼に入らなかったものが見えてくる。
三十数年ぶりの『メイシャ』は少し印象の違う、油断のならないものになっていた。
(了)
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