『 中秋の名月 』 −2−
夕方、いつものごとくビールとワイン、刺身やスパゲッティ、スモークたん、おいなりさんなどを仕込んで、海岸の堤に腰をかけ、サーフィンに興じる若者を眺める。
午後四時を過ぎて、やっと天気は落ち着いてきた。
外房の海の水は綺麗で、白波の立った時の際(きわ)の水の色が、エメラルドグリーンに近い淡いブルーだった。
毎度のことなのだが、刺身を肴にワインをこくり。(といただく)
どちらも地元の大型スーパーで仕込んだものだけどそれで充分。
これを海辺でやる。
景色も空も風も心地よい。
日が沈みはじめると、群青色に変わった海原に、仄かにミルキーなコーラルオレンジというか、サーモンピンクの夕陽が映し出されていた。
えも言えぬ自然の妙だ。
防波堤に腰をかけている背中の街灯がともりだした。
午後六時を過ぎると陽は大分落ち、乗る波を待つ黒い小さな人影がまだ二つ三つあった。
空は十五夜の明るさを雲が遮っているのだが、やはりそれほど暗くはない。
翌日の好天を予想させる如く、雲が駆け足で抜けていく。
愛犬と暗くなった砂浜に降りて少し走った。
水辺を歩かそうとすると、水嫌いの彼は脚を突っ張って踏ん張り、僕のいたずらにはのってこない。
僕に似てとてもビビりなのだ。
野良猫が寄ってきた。
食べ物目当てなのにうちの愛犬を威嚇する。
それでも、せっかくなので残っていたびんちょうマグロを二切れほどやった。
暫くしても『ミャーミャー』としつこくやってくるので、酔いも手伝って最後の一切れもあげてしまった。
僕は雲間から差し照らす月明かりが海に煌めいているのを、写真に納めようとする。
もちろんまんまるの『十五夜の月』を一緒にフレームに入れたい。
が、まだ残る雲が意地悪をして、なかなかシャッターチャンスを捕らえられない。
カメラを使いこなせず、以前にこのカメラで見ることのできた月面のアップも思うように撮ることができなかった。
目の前にあの45億年前の大きな月があったら、はたして今宵の『中秋の名月』はどのように目に映ったのだろうか。
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