« 2014年2月 | トップページ | 2014年6月 »

2014年4月

2014年4月 1日 (火)

『 歳をとる 』

『歳をとる』というとなんだか厭な感じの言葉だけれど、実際に厭な感じの時に使うのだから仕方がない。

老眼で新聞の文字が見えなくなったり、
常に足腰が痛かったり、
体力的に衰えた時に使われることがまず、多いですな。


『全く歳はとりたくないね。』
と言いながら病院に通うのなんかは、ちょっとしたコミュニティに参加しているぐらいなんもんで。


『よぉ秀さんどうしたい?』
『いやぁ、頭が痛くてね。』
『そりゃぁ困ったなぁ。』
『じろ兵衛さんはどうしたの?』
『おぅ、俺か?俺はどうしたも、こうしたもねぇんだ。』
『そいつはてぇへんだ!
で、どうしたの?』
『あぁ、全くどうしもしねぇんだ!』
『じゃぁなんだって医者なんか来たの?』
『そいつがわかんねぇから来たんだ!遠路遥々。』
『何言ってんだい、横町二つばか歩って来ただけでしょ。』
『そうか、そいつは重症だ。医者に来た甲斐があるってもんだ。良かった良かった。全く歳はとりたくないねぇ。』
『良かった良かったって、そんなこたぁないよ、こんなやぶ医者。』

『はい、藪ですが如何いたしたかな?』
と薮医者登場。

『あぁ、先生、まいったなぁ。』と慌てる秀さん。

『先生のお名前が藪だってことは、周知のことだったんですよ、全くどうも。』
『イヤイヤ私の名前は竹内ですから、』
『あれっ?じゃぁやっぱり竹藪じゃない。』
『何を洒落てるんだね。まぁ、ところで今日はどうしたの?』
『それを診るのが医者でしょ、竹藪先生。』
『竹内だよ。』
『一緒でしょ。』
『今日はアタシなんかどうでも良いの。じろ兵衛さんが大変なんで、』
『そちらの方。』
『へえ。』
『どうしましたか?』
『それを診るのが竹藪…』
『分かりましたよ。
じゃあ、こっちへ来て。』
『口を開けて、』
おちょぼに口をあけるじろ兵衛。
ヘラでこじ開けようとする藪医者。

『舌を出してぇ。』
寄り目で斜め上に舌を出すじろ兵衛。
舌を掴んで、下側に引っ張ろうとする藪医者も舌を出している。
懸命でコチラも鬼の形相。

傍で笑い出す秀さん。

『医者と患者ってのは、いつもこんなにらめっこしてんのかなぁ。ふふふ。』
『笑ったなぁ、秀さんの負けだぁ。』と喜ぶじろ兵衛。

『何を言ってるんです。遊んでるんじゃないんだから、』
『こりゃどうも。』

『じゃあ、質問しますね。』
『どうぞ。』
『痛いところはありますか?』
『うぅーん、なんとなぁく頭と首とぉ肩…』
『ほぉ、』
『それとこの辺とこの辺なんかもちょっと変な感じがしてぇ…』

『違和感かな?』

『へぇ、そいでもって勿論腰と膝なんかも当たり前のように痛くって…』

『あんた、さっき『どうしもしねぇ』って言ってなかったかい?』と秀さん。

『あれっ?そうだなぁ。』
『いや、先生に訊かれたら、なんだか、ここもあすこも、痛くなっちゃったよぉ。
蚊に刺されたあと、気付かなかったのにさぁ、ちょっと触れたら痒くなるみてぇな、ね。』
『巧いねどうも。』
『へへ、どうも。』

てんで、血液検査、レントゲン、心電図、にMRI。
脳波にエコーに胃カメラから内視鏡まで、上から下から、四方八方から検査という検査はすべて遣り尽くしましたが、
で、結果は?ってぇと
何にも悪いところはないとうことで。

『じゃあ、先生!原因はなんなんですかい!?』
とじろ兵衛と秀さん。

医者は腕を組み、目を瞑り一言。
『うーん、すべては藪の中。』


     (了)

| | コメント (0)

« 2014年2月 | トップページ | 2014年6月 »