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2014年8月21日 (木)

『 禁断の飲み物 』 -中編-

何故に今、『禁断』なのかといえば、貧乏ったらしく思えるからだ。


家で作った麦茶に砂糖を入れて、ジュースを飲んでいるかのような贅沢感を味わっていた訳で、
あれから40年もの時が過ぎ、溢れかえるほどの清涼飲料やお茶の類いがあるなか、それを現代に味わってもいいものか、というところだ。

しかし、コレがなんとも微妙に美味しかったんだよなぁ。


今でも、麦茶は沸かしたお湯で点ててはいるけれど、昔のように麦を直接ヤカンで煮だすような贅沢さ(スローライフという意味でね。)はない。


煮出している時の薫りのことを芳醇というのではないか。

またこの方法のほうがコクがあるし、麦の風味や芳ばしさがよく出て間違いなく美味しい。

コーヒーと間違えてしまうくらいに味わいが深い。

そこにナポリのエスプレッソコーヒーよろしく
上白糖をたっぷりと投入。
スプーンでかき回してもなかなか溶けない砂糖粒がグラスの中で何周も何周も回っているのを、「早く溶けてくれー」、とずっと見つめていた。

グラニュー糖ではなく、上白糖というところがまた、貧乏ったらしいんだけどね。

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この夏、家に一人でいるでいるときだった。

まさに家には飲み物らしいものが見当たらなかった。
冷蔵庫には麦茶しかない。
たまたま、コーヒーも、野菜ジュースもカルピスも切らしていた。
(ビールはあったかもしれないけど)


僕はいけないと思いながら、母の三面鏡の引き出しを開けるかのような気持ちで、あの『砂糖入りの冷たい麦茶』を飲むことにした。

水だしもできるパック麦茶だが、お湯でたてているので、そこそこ濃い色をしている。
氷の入ったデュラレックス社(フランス製)のグラスに注ぐと瞬く間に表面が結露する。

麦茶に浮かぶ氷山に薄茶色の三温糖を、小さじ一杯を投入し、かき混ぜる。


カリンカリンと涼しい音色を聴かせて、氷と砂糖は冷たい麦茶の中で回りはじめた。
僕は40年前と同じようにその様を見つめ、タイムスリップした感覚に陥り始めた。

               (つづく)

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