『悲願』 –4–
僕ら日本人は、小学生の頃から『リレー』とは慣れ親しんでいる。
リレーはチームワークだ。
バトンの受け渡しは最重要課題である。
僕の中学では体育大卒の教師に、無駄のないバトンパスを習ったりした。
僕ら日本人は小さな頃から『リレー』のチーム意識やバトンパスの技術の向上などを培う土壌があるということだろう。
朝原選手も日本一速い人だった訳だから、ずうっとリレーの選手だったはずだ。
日本チームは朝原選手を良き兄貴として、先輩としてリスペクトしてきたのでこの結果が得られたのだと思う。
しかし四人のうち、誰一人として100m決勝のトラックに立てない日本人選手が、バトンパスの技術でオリンピックの銅メダルを獲得したことは、賞讃に値するだろう。
アメリカチームがバトンを落としたのも技術の問題だ。
マスコミは史子夫人がアスリートで、元シンクロのメダリストであることを取り上げる。
昨年の世界陸上大阪大会での惨敗。
そして復活のドラマ。
人間なんて単純なものだから、もちろん奥さんの「内助の功」もあるに違いない。
しかし僕は、若い頃に朝原選手が世界に近づいたことが、日本人のスプリンター魂が徐々に湧き上がったことが、バトンパス技術を向上させたことが、今回のメダルに繋がった大きな理由だと思う。
日本チームのバトンパスは、アテネオリンピック男子4×100mリレーで朝原選手、末續選手、高平選手とともに、当時チームの一員だった、『土江寛裕』コーチの存在なくして語ることはできない。
バトンパスを短縮する為に様々な資料を収集し、検証を積み重ねたそうだ。
その成果が、今回、バトンゾーンでの世界一のタイムを記録したことに繋がっている。
四人のメダリスト達はレース後のインタビューで口々に日本短距離界の先人達のおかげであることを語った。
世界の壁を乗り越える可能性を見出したとき、朝原選手、末續選手、スター選手らの出現と努力によって現実化してきた。
結果の連続、つまりは日本短距離の歴史が礎となって、彼らは記録を打ち立てたのだ。
そしてその事へ感謝しているインタビューは奇麗事としてではなく、素直に好感の持てるものだった。
それにしても、日本女子ソフトボールの金メダルのウィニングボールといい、
男子4×100mリレーの銅メダルのバトンといい、
結果を手にした瞬間、興奮したアスリートに同じように天に投げられてしまうなんて、
その『悲願』の度合いを物語るにホント、象徴的な出来事だなぁと思った。
(了)


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