健康

2012年11月 6日 (火)

『 身体測定 』

こないだ、年に一度の健康診断を受けた。
近所の町医者でである。


尿採取から始まり、胸部レントゲン、心電図計測、胸部触診、血液採取、血圧計測、音叉での聴覚検査など極簡単な健康診断である。


看護師の男性なんかは、ちょこちょこと忘れていることがあったりして、
心電図を撮り終えて、一度別の部屋へ誘ったかと思ったら、その場で
『あっ、お腹図りましょう。』とか、


『後は受付で呼ばれるのをお待ち下さい』、と待ち合いのソファーに腰を掛けたところに、

『あっ、視力検査をやってなかった。』
なんて、奥から飛び出て来たりと、全くのんびりしたもんだ。


腹囲計測なんかもあって、もちろん『メタボ検診』の入口なんだろうが、僕の数値は、
『85.5㎝』だった。
コレは入口を入らなければいけないということか。


それともう一つ、身長、体重計測である。
小学生の頃は今年は何センチなんだろうと、兄に比べて背の伸びが遅かった僕はどきどきしたもんだ。


こないだ喜寿を迎えた母が入院をし、その際にやはり、身長、体重を測ったのだが、母の身長は14*㎝だと言われた。

母の身長は、長いこと公称15*㎝だったので、
『えぇ、4㎝も縮んだのかぁ』と老化を体感した一方で、実は
『サバ読んでやがったな。』と小声で呟いたりもした。
もちろん、病の身なので、聞こえないようにしたけどね。


で、僕の身長なのだが、公称176.5㎝もまさか縮んでいやしないかと、実は恐る恐る計測機に乗ってみたのである。

のんびりした看護師が言った。
『はい、177.4㎝。』
(『えっ、伸びてる。』)

靴下を履き、髪の毛も多少伸びてるけれど、9㎜は伸びないだろう。


もうじき47歳。
まだまだ育ち盛り。
白飯(しろめし)はまだ一食一合以上は食べている。



               (了)

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2012年4月24日 (火)

『 ザブングル、抜歯時々激痛、のち…… 』

ザブングルカトーはゴールデンウィークを前に、重い腰を上げた。
『歯医者さん』(『歯医者さん』–歯ッ欠け–参照)へ向かったのである。

しかし、今日、院長先生はいない。


レントゲン写真を診た女医先生は言った。
『今日(親不知を)抜くと、炎症を起こしているので、麻酔は効き難いし、腫れもひかないかも…』
カトーはたじろぎ、悩んだ。
仕事は詰まっていたし、来週の休みには予定を入れていた。
カトーは意を決し、『抜いて下さい!』といった。

あの先生の娘さんなのだから、腕前も良いはずだ。
以前に院長先生に親不知を抜いてもらった時には全くと言っていいほど痛みがなく、血も出なかった。
その時に院長先生が言った『抜歯術だよ。』という言葉を、この女医先生にも当てはまることを祈った。


痛みをうかがいながら、麻酔はおそらく十数ヶ所に及んだはずだ。
時間を掛け、徐々に徐々に、大きくて無用で不要な永久歯が身を起こす。

カトーは抜歯の状況を想像しないことで、痛みから遠ざかろうとした。
が、がである。
痛みはそんなカトーをあざ笑うかのように訪れたのである。
しかも、これがまた、『激痛!』なのだ。

涙はこぼれ落ち、唇は痙攣を起こしていた。
女医先生の持つ抜歯道具が、ギシギシと唸りをあげていくうちにカトーの意識は一瞬遠のきそうになった。


休み休みでおよそ20分くらいはかかったのだろうか。
大きくて無用で不要な永久歯は、無様にも診察台の上にコロリと置かれていた。

『後は良くなる方向へ向いていますから、… 』
『でも、今夜は痛いと思いますけどね… 』
と言った女医先生は、最後に笑ったように見えた。


カトーは処方箋を握りしめ薬局へ急いだ。
が、速く歩けば歩くだけ痛みが再び顔をもたげてきたのである。

処方箋薬局にたどり着いた時には痛みは『激痛』に変化していた。
カトーは処方の言葉を遮るかのように鎮痛剤を開け出し、薬局で売っていたミネラルウォーターで飲み干した。
映画で見るような、麻薬中毒者が薬を貪るかのようにだ。
カトーは身体を震わせていた。
身体に熱を持っていたからだ。


薬を飲んで、およそ一時間はたったころである。
カトーは食事に出かけてみた。
痛みは失せていたのだ。
初めのうちは顎が上がらず、恐る恐るにスパゲッティなんかを吸っては飲み込んでいた。
それが、食事を続けているうちに顎が開きはじめ、抜歯されていない方の顎で噛むことが出来るようになっていったのだ。


カトーがおもむろに、レストルームへ行った時である。
入ってすぐ、鏡に映る自分の顔を見て思った。
僕はもはや『ザブングルカトー』ではなく、『ハラタツノリ』なのだ、と。

              (了)

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2010年4月15日 (木)

『 歯医者さん 』  ー 歯ッ欠け ー (完)

前歯に入れる歯、これも義歯になるのだろうか、が出来上がっている。

これを入れたら、僕の前歯の歯っ欠けから、さらにはお歯黒からもおさらばである。
すると、歯医者さんへの通院も終了する。


また、雨が降っていた。

自転車を停めて、中へ入る。
待合の長椅子に腰掛けるとすぐに先生がこちらを向いて、『うん、どうも』という顔をして、笑顔を見せようと無理をしている感があった。

『久しぶり。』
『ご無沙汰しちゃってスイマセン。』

少し、怒っているように感じられたの気のせいだろうか。
まぁ、これは深く付き合うようになった証のようなものかもしれない。


治療台につく。
先とは一転、
『へへぇ〜、どうかなぁ、……』と先生が笑みをこぼす。
『はい。』と言いつつも、僕は運ばれてきた義歯を見てショックだった。

「お歯黒からの脱出。」
これが一つの願いでもあった。なのに、……

薄い黄色の歯型の模型の中に、一本だけ色の違う歯が乗っている。
これが自分の歯茎に装着されるのだ、とすぐに解った。

その歯はことのほか色が『黒』かったのだ。

先生がいつものごとく、木槌のようなもので、コンコンとやって仮の歯を外す。
すると、銀色の下地(したじ)があらわれる。
先生はこれが好きだ。
これとは、その『銀の下地』のこと。

「『007』の怪人みたいだよねぇ。フフ。」
(『ムーンレイカー』に出演していたリチャード・キールさん演じる役名『ジョーズ』のことだろう。)

そして持ってきたその黒い歯をその下地にグイグイと填めていく。
(ちょっときついな、と思った。)

その後がまた、ショックだった。
その黒い歯が、僕の歯の中に並べてみたら、なんと……、

『ちょっと白いかなぁ。』と先生。

丸い手鏡を渡され、見てみる。
(ああぁ〜、『白い』ぃ〜〜〜。)

本歯(義歯)が思っていたよりも、白かったのだ。
僕の歯はそんなにも黒いのかと愕然とした。

『大丈夫かなぁ、難しいねぇ。』と先生。

僕は鏡を見ながら、ふんふん言って、
『いや、はいっ。大丈夫ですよ。ぜんぜん。』

確かに白いとは思った、が今までのお歯黒からの脱却を望んでいた僕は、その白い歯に対して『好意的』であった。

それに、言われれば確かに白いけれど、反対側の義歯にくらべればそんなに変りはない。

『いつかこの自分の歯が白くなることを願っているので、問題ないです。』と僕は冗談のつもりで言った。

『いやぁ、白くはならないなぁ。それには漂白をして……』と先生は真面目に応えてくれた。
親身になって考えてくれる先生だ。

義歯の治まりを調整して僕の歯ッ欠けの治療は終わった。
これでまた安心して仕事に望むことができる。
が、同時にこのことは、僕がこの歯医者さんにこなくても良いということになる。

先生は治療のこと、趣味のこと、ご家族のことなどとても興味深いことを治療中やお会計時に話してくれた。
歯医者さんへ行くのが、こんなに楽しみだったことはなかった。
これで、僕の通院も終わりかと思うと少し寂しく思われた。

と思っていたら、実はもう一本、前歯の治療を同時進行中だった。

よかった、また来週の予約をとって挨拶をして帰った。

               (了)

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2010年3月24日 (水)

『 歯医者さん 』  ー 歯ッ欠け ー (10)

先ほどテレビのニュース情報番組で『出張歯科医院』なるものがあると放送していた。

半身不随や認知症の方など、家から出られない人の治療をするのだという。
ルーター(タービン)もレントゲンも出張用に改良されたものだだ。

認知症のお年寄りは、口の中を触られるのを嫌がり、口を開けなかったり、口を開けようとする先生の指を噛もうとしたり、家族の方々ではかなり難しい。

番組では、こうした医院が増えた理由としては『経営』と為だそうだ。
競争が激しいのだ。

歯科医院の数が全国で約68000軒もあるのだと、その数はコンビニエンスストアーの1.5倍という数字にビックリした。

確かにうちの近所にも歯医者さんが沢山あるとは思っていたけど、そんなに患者さんがいるものなのだろうか。

僕は過去にいくつもの歯医者さんに通ってきたが、必ずだれかの紹介だった。
近所にできたからって、ラーメン屋で試しに一杯なんてのとは違うと思うのだが、普通の人はどうなのだろうか。


お医者さんだけではないかもしれないが、患者さんが(客)が、病院を選ぶ決め手は信頼ではないだろうか。
医学的なことは、とても専門的で、一般の人(患者)からすると。わからないことが多い。
何をされているのか、なんでそうするのか。
ほとんどわからないままだ。
最近では、処方した薬がなんという名前で、どういうものかを印刷したものをくれるようにはなってきたので、少しは安心をあたえてくれるようにはなった。
(僕のお歯黒は、昭和40年代のテトラサイクリン系の抗生物質の連続投与によって出来上がったのだ)


次の診察で型をとった歯の本歯が出来上がってくる。
先生が僕の歯と合う色の歯の見本を見比べて悩んで、僕にも確認をとった。

ずらりと並んだ歯の形をした色見本。(シェードガイドという)
陶器メーカーの名前があった。

僕は帰り際に訊いた。
『あの、歯を白くする、トリートメントっていうんですか。あれはどうなんですか。』

『あれは、歯に良くないのね。歯を漂白するわけだから……』
『僕の知人も、あんまり好きな人ではなかったんだけど、やっている人がいて、……』
『どうしてそんなことやるのって、訊いたら、経営がうまくいっていないから、ってネ。』
『よくないって、わかっててねぇ。』

先生は見たことのない厳しい表情で、話していた。

『神様から授かった身体に手を加えるなんてねぇ、』
と最後は笑みをこぼしてくれた。

この先生はやっぱり信頼できる。

               (つづく)

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2010年3月21日 (日)

『 歯医者さん 』  ー 歯ッ欠け ー (9)

「シャカシャカ」と先生が印象材をこねている。

ピンクのとブルーのが一般的というのだろうか。
僕の場合、大概はこれだった。


この時は中学時代だったか、僕はうちから二つ目の駅にあった歯医者さんまで自転車で通っていた。
その歯医者さんも近所のおばさんが通っていて『イイ』という情報を母が仕入れてきた。

思春期だった僕にとって楽しみだったのは、その歯医者さんにはちょっと色っぽい歯科衛生士さんがいたのだ。

昭和五十年代のはなしだ。
白衣はその後に一世を風靡する「ボディコン」チックなもので、髪は栗色。
瞳はクォーターなのかブラウンだった気がするし、睫毛は現代(いま)ほどでないにしても、とても主張していた。

そんな歯医者さんで事件が起きた。

その日、僕は上顎のだったか、歯型を取ることになった。
スチールの、上顎にあわせたカタチのザルのようなものに、ピンクの印象材。

僕は倒された診察台に身を預けたまま、顎を天井に向けた。
先生は手にしていたスチール製のそれを僕の口の中に差し込んだ。

冷やっとした。
先生はそれが僕の上顎に嵌まったと確認すると奥の部屋へ行ってしまった。
そして歯科衛生士の彼女も。

あーあ、と思った次の瞬間、僕は、
『アァーアァーーーー』とさらに過激に思うと同時に

『ウォェーーーッウォェーーーッウォェーーーーーー』
叫びたくても叫べない状態で、嗚咽とも悲鳴ともつかない声のような音を咽から発していた。

ピンクの印象材が僕の咽にむけて垂れてきたのだ。
(『先生ーー、センセーーーーィーー』)と心の中で唱えながら、
『ンゴォフッ、ンゴッ』とやっていたら、奥から歯科衛生士さんが戻ってきた。

僕は涙目になった顔をそちらに向け、手を挙げてモーレツにアピールした。
すると、気がついてくれた歯科衛生士さんが診察台のリクライニングを戻してくれ、おそらくすぐさま、『パコッ』とそれ(印象材)を外してくれたはずだ。

この時もホントに死ぬかと思った。
歯科衛生士さんへのイヤラシイ考えがバチに当たったのだろうか。

それ以降、僕は歯型を取る時は自分でも気をつけるようにしている。
この話しを今回の先生にも話したら(歯科衛生士のこと以外ね)、先生は言った。

『歯型を取って死んじゃったら、堪まったもんじゃないねぇ。』

今の先生は歯型を取る際にちゃんと印象材が固まるまで、僕の顎を押さえながら、スチール製のザルを持っていた。
患者に対する誠意と言うか、診療に対して真摯な姿勢が好感を持てると言ったら生意気だろうか。

               (つづく)

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2010年3月18日 (木)

『 歯医者さん 』  ー 歯ッ欠け ー (8)

歯医者さんに通うのも、今日を入れてあと二回くらいか。
午後六時の予約に約15分くらい前に着いた。

待っている靴は一足。
色白の女性が一人。

書棚にある盆栽の本を手に取って待合の長椅子に腰掛ける。

先生はルーター(タービン)で何かを削っていた。
その先生が立ち上がってきて、僕に笑みを浮かべ挨拶したあと、茶髪のボブヘアーの色白の五十前後の女性に、
『どうぞ』と声を掛ける。

僕は、この盆栽の本を楽しみにしていた。
どうにかしたら、素人でも、盆栽を造ることができるのではないかと思っていた。
読みはじめていると、診察室(治療室)から少し黄色い声が響いてきた。

この声には色を感じた。
いわゆる色艶の色だ。

僕は盆栽に適した土の項を繰り返し読みながら、その声を追った。

『あ〜ら先生、ご無沙汰ですことぉ。』的な喋りで自分をモーレツにアピールしていた。
盆栽の造り方に没頭しながら、

『私は(生まれ変わったら)二度と経営者はやらない……』と、
『先生、天才ー!』などといった白々しい言葉が耳に入り込んでくる。

見てはいないが、先生は少し顔を赤らめていた。
『いやいや(にやにや)』とだけ言っている。

僕はツツジの挿し木の方法を覚えようとしながら、
(この色気婆め、イヤラシイ奴だ。)と考えていた。

先生も先生だ、ニヤニヤしちゃって、と。
これは、ひょっとして『嫉妬』か。

『人たらし』という言葉を思いついたけど、先生の場合はちがうのかなぁ。

それでも、先生の魅力は男も女もないのだということなのだろう。

そして、盆栽の造り方に満足するくらいの時間が経ったところで、やっと僕の番がきた。
五十女性は会計の時にも、ぺちゃくちゃとやっていたけど。

そして今日の僕はお歯黒だった欠けた歯を仮歯から、本歯にする為の型取りだ。
これを『印象』と言う。

実は僕はこの印象でも、有る事件を経験していた。

               (つづく)

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2010年3月14日 (日)

『 歯医者さん 』  ー 歯ッ欠け ー (7)

『金(かね)を入れる』

先生は何を言ったのか。

暫くそう考えていると、まもなく先生が口を開いた。

『酢酸と金(かね)を混ぜるのね。』

あれ、『おはぐろ』のことかな、と気付いた。

『お歯黒のことですか。』と僕。

『うーん。虫歯にもなりにくいんですよ。』

『私達が歯医者に成り立ての頃には、「×××××」と言って、歯を黒く染める研修会がまだありましたよ』と先生。(この「×××××」が思い出せない。)

『ええっー。』僕は感嘆した。

現代の世に『お歯黒』のことを語った上に、それを昭和とは言え、実践していた人がいただなんて、ということにだ。

僕はまた、調べてみようと思った。

先生が言っていた、『かね』とは『金』ではなく、『鉄漿(かね)』のことで、『鉄漿付け』なんて言われていた。
では、『鉄漿』とはなにか。
実は『おはぐろ』とも読みあてられるそうだ。
また、『かね』と読む時は、歯を染めるのに使う液のことを言うらしい。

これは、酢酸に鉄を溶かした茶褐色でかつ、もの凄い悪臭を放つ溶液のことだそうだ。
昔は酢酸の代わりに焼いた鉄くずや針と、粥や茶、麹、酢、酒などを混ぜ、約二か月くらい暗所で発酵させてつくるので、まぁそれはむせ返るほどの臭いだったのだそうだ。

これを『五倍子粉(ふしこ)』という、『白膠木(ぬるで)』という木の葉に含まれている『タンニン酸』を含む白い粉と混ぜて塗るだそうだ。

要は『鉄』と『タンニン』を混ぜて歯に塗ることで歯のエナメル質に浸透させ、黒く染めるのだそうだ。
紅茶に蜂蜜を入れると、黒くなるのは、紅茶のタンニンと蜂蜜の鉄分が反応するから。
ちなみにイギリスでは『紅茶』のことを『ブラックティー』と呼ぶそうで、鉄分を含む硬水と茶葉のタンニンが反応して黒くなるからだそうだ。

歴史は古く『魏志倭人伝』にも『東方に黒歯国あり』と書かれていたくらいに古い。
聖徳太子もお歯黒をしていたし、古事記の応神天皇の歌にもお歯黒が歌われてもいたりとか。

『お歯黒』は、巷の説では、『二夫にまみえず』という貞節の意味があったというものがあるが、これは近世に後付されたとか、(『お江戸今昔堂』さんHP)
長い間の「通い婚」の習慣は女性上位であると同時に女性の自由恋愛のカタチだったとも、という『今昔堂』さんの見解も面白い。

一方、男性の『お歯黒』はファッションで行ったという説や武士が一生涯のうちに『二君を持たない』という忠誠の証に行われたと言う説、高級武士だけが『お歯黒』をしたという説がある、というのが『しのざき歯科医院』さんに書かれているのも面白い。


また、天平年間には鑑真和尚が岡山県の香登(かがと)に、以前のものより化学的に安定した、変質も異臭もしないお歯黒の製造法を伝えてもいる、など興味深い話がたくさんある。
(御興味のわいた方は、参照したHPをご覧ください。)

で、僕の歯科治療もそろそろ終わりがみえてきたのである。

               (つづく)
※『お歯黒』については、
『しのざき歯科医院』さんのHP(http://www.geocities.jp/dentopia21/fkanetuke.html
『お江戸今昔堂』さんのHP(http://pub.ne.jp/lost_arrow/?entry_id=383387)
を参照させていただきました。

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2010年3月11日 (木)

『 歯医者さん 』  ー 歯ッ欠け ー (6)

総合病院で貰った手紙を持って、翌日、僕はまた地元の歯医者さんのところへ行った。
『ヤギ』の『郵便配達』の歌を思い出した。

「やぎさんゆうびん」(作詞:まどみちお、作曲:團 伊玖麿)敬称略

『 白やぎさんからお手紙着いた
黒やぎさんたら読まずに食べた
仕方がないのでお手紙書いた
さっきの手紙のご用事なあに 』


この日はようやく雨も雪も降ることはなく、この時期にしてはわりかし暖かい陽気だった。

僕は手紙を先生に渡した。
先生は眼鏡越しに目を細め、ふうん、という顔をした。

『「瘢痕」ねぇ。「よくある」って書いてあるんですけどね。』
『はぁ。』

出た、『瘢痕』。
『あちらの先生が難しい文字を書いて教えてくれました。』
と僕はまた先生との歯医者談義を楽しもうとこちらからも口を開く。

『「よくあること」だって書いてるんですけどねぇ。』と先生。

(僕はそんなこと分かりっこない。だって孔が写ってないんだから)と、頭の中で考えていた。

『僕は五十年この仕事をやっていて、ないんですよ。僕がやった処置ではネ。フフ。』と軽く笑った。

『まぁ、二十年間なにもなかったわけだから、大丈夫でしょっ。』と言って、
『じゃぁ、削って、歯を作っていきましょう。』ということになった。

先に書いたルーター(実際は『タービン』と言うらしい)で僕の歯が削られていく。
あの独特の焦げた臭いをさせながら、

歯の真ん中も再度、穴を開け、「モールポスト」なる芯を埋めて、仮の歯を作ってくれることになった。

歯を作るには、歯を埋めるところの型をとる。(これを歯科用語で『印象』と言うらしい)
速乾性の高いゴムを当てて、固まったところに石膏を流し込む。

先生はそういった過程も見せてくれて、解説してくれる。
ピンクとブルーのゴムが固まり、ブルーの部分は芯の入る穴の部分を彩っていた。
白く固まった石膏が歯茎や削られた歯をリアルに再現している。
ここに合う歯を作っていくわけだ。

『仮の歯を作るんですけど、今あるのがちょっと色が白いんですけど、本番の歯の時はちゃんと色を合わせますからね。』と先生が言った。

先生は奥の部屋で、仮の歯を作っていたようだ。
そして、出来上がったのを填めてみたり、削ってみたりを繰り返す。
数十分は掛かったと思う。
先生が『どうですか。』と見せてくれた。

僕は先生に考えていたことを言った。
『いやぁ、高校時代の悪友が僕の歯を見て、「おはぐろ、おはぐろ」って馬鹿にしてたんで、そいつに見せてやりますよ。』と笑った。

ここで又、先生の触角がビンビンと動く。

『金(かね)を入れるって言うんですよ。』

僕は先生が何を話しだしたのか、さっぱり分からなかった。

               (つづく)

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2010年3月 7日 (日)

『 歯医者さん 』  ー 歯ッ欠け ー (5)

小柄で顔立ちのはっきりしたその先生は物腰柔らかで、地元の先生の言う『優しい』感が滲み出ている。

パソコンをちょこちょこっとクリックしたら、僕が灯台のようになって撮られた歯全体のレントゲン写真があらわれた。

その先生は地元の先生の紹介状を目にしながら、その部分に焦点を合わせて、また大きくしてみたりした。
けど、患部、上顎の孔のところがぼんやりとも写っていない。

すると先生が、
『もう一枚、小さいのを撮らして下さい。』と、

僕は『はい。』と言うしかない。

今度はそのすぐ裏にある部分用レントゲンだ。
放射線遮断エプロンを掛けさせられ、僕は右の人差し指を要求された。
そう、こちらの先生はフィルムを自分では押さえない。

椅子もやや倒された状態で、歯に対してレントゲン透写部が垂直に当たっていない気がした。

透写が終わると元の診察台に戻る。
先生はレントゲンが出来上がるまで隣の診察室へ。
そして、戻ってくると出来上がった写真を見る。
僕も椅子の上から遠目で覗く。

先生は言葉が出ない。
僕が覗き込んだ限りでは、地元の先生が撮ったような、上顎の孔は確認できなかった。
おそらく、その部分がちゃんと写されていなかったのだと思う。

暫くすると、先生は
『これは、「瘢痕」(はんこん)と言って……』
とその難しい文字をメモ帳に書いてくれた。

『口腔外科の手術をしていると、よくあることなんですよ、……』
『完全な孔が開いているわけではなくってね。』
『(地元の)先生にお手紙を書きますので、それを渡して下さい。』

と、

『瘢痕』なんて難しい文字を書いたのには意味があったのかもしれない。
僕は二時間以上も待って、ほとんど役に立たないレントゲン写真を2枚撮って、地元の先生への手紙を持って帰ってくるだけに終わったのだから。

本当に大丈夫なのだろうか。
そう思いつつ、二十何年も大丈夫だったんだから、大丈夫だよなと思うことにした。
後は、地元の先生に任しておこうと。


病院を出ると、雪は止んでいた。

               (つづく)

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2010年3月 3日 (水)

『 歯医者さん 』  ー 歯ッ欠け ー (4)

なんと今回は雪だ。
全く歯医者さんの日に晴れることが無い。
深層心理が天候に象徴されているのか。

ひらひらと東京特有の雪が舞う中、僕は自転車を走らせた。
地下鉄を一駅乗って、最寄り駅から5、6分歩く距離だったので自転車にしたのだ。

古くからある大きな総合病院だが、立て直したのだろうか、外観も中も綺麗だった。

朝の8時に行ったのだが、もう既に待ち合いの大画面テレビでオリンピックを見ている人がぱらぱらといた。

診察券を作ってもらい、二階の口腔外科の受付へ行って驚いた。

『カラッ、カーーーーー。』と乾いた金属音。
4-50センチ真四角のパソコン本体のような物体が、廊下の天井に貼られたレールの下を移動してきたのだ。

見ると、各科の受付に吸い込まれている。
口腔外科でもレールは受付の後まで引かれており、おそらく患者さんらのカルテなどを含む重要な情報がぎっしりと詰まっているのだろう。

暫くすると初診の僕は、レントゲンを撮るのに放射線科に行くように指示された。

ここでは歯医者さんで撮った部分的なものではなく、全ての歯をずらりと一辺に撮影することができる機械だ。

そう言えば、レントゲンのことはカメラとは言わない。
ホントは撮影ではなく、投射とか言うんだったか。

機械の前に立って、閉じた扇子のようなものを銜え(くわえ)、顎の位置を調整すると、レントゲンの技師さんは部屋を出た。
僕を中心に機械がぐるりと回る。
僕は灯台になった気分だ。

受付に戻ると待合室で呼ばれるのを待つように言われた。
僕は病院にあったフリーペーパーを端から端まで読み漁った。

知らないことが沢山あるものだ。
が、しかし、僕の順番はこない。

整理番号で自分よりも後の人が大勢呼ばれていった。
仕事に大した支障がないと思っていたが、時計を見るたびに予定が崩されていく。

病院についておよそ二時間が経過したころ、担当の先生のいる部屋とは違う部屋からお呼びが掛かった。

お目当ての先生ではなく、別の女性の先生による問診だった。
挨拶もそこそこに僕は診察台に腰を掛け、背中越しに先生との対話が始まった。
明るくきれいな、なんの飾りもない壁を見つめながら応えていたがやはり異和感あった。

先生は診てもらおうと思ったのと違う歯の方ばかり訊いてくるので、僕は修正しながら応えていった。

一通り終えて、また待合の席に戻り、少し居眠り加減で呼ばれるのを待った。

この時に気がついたことがあった。
僕が入っていったのは、『診察室』。

それとは別にアナウンスされていたのが、
『誰々さーん。治療室にお入り下さーい。』
の『治療室』。

今まで『診察台』と書いてきたは『治療台』のことだったのか。

               (つづく)

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